あしぎぬ福祉会では、法人全体での研修や新人研修などで認知症の理解を深めることに取り組んでいます。
これまでは、認知症を知り、病気の症状や特徴を正しく理解すること、
認知症である前に、ひとりの人であることを理解すること、などを目指して研修を実施してきました。
そして今回は、認知症の症状だけでなく、その方の思いを知り、受け入れ、寄り添う介護の実践につなげられるよう、認知症の方が見えている世界、感じておられる世界を体験できるバーチャルリアリティ研修を、株式会社シルバーウッド様のご協力のもと行いました。
外村満寿園、溝谷満寿園、あしぎぬホームなごみの3拠点から、約40名の職員が参加しました。
ゴーグルとヘッドホンを装着し、その方の視点でストーリーが進んでいきます。
私たちが体験したのは、時間や場所、人物をうまく認識することができなくなる見当識障害のある方、実際にそこにはないものが見えている幻視の症状のある方などのストーリーで、どれも若年性認知症の方などへの取材に基づいた実体験をもとに作られた、とてもリアルな内容でした。体験終了後のグループワークでは、体験を通して感じた気持ちを共有し、その時どうしてもらえるとうれしいかを考え、意見交換しました。
どんな言葉かけや対応が必要か、という周りからの視点ではなく、「その時どんな気持ちか」を知り、「自分ならどうして欲しいか」、当事者の立場で考えることを大切にしたのが今回の研修です。
認知症の症状は、人によって大きく違います。
そして当然ですが、おひとりおひとりが感じられる気持ちも違います。
今回の研修で、不安、恐怖心、疲労感、さみしさや悔しさなどを感じ、そして、そばにいてくれる人の言葉や視線、対応に悲しさや不信感を抱いたり、逆に心が救われたりする気持ちを知りました。そして、一般的には問題行動と言われているような行動が、見えているものや感じていることによる当然の反応であることも知りました。
そのうえで「こんな時自分ならこうしてほしい」と、これからも考え続けていくことが、その人に寄り添うケアにつながり、私たちの理念である、その人の思いを受け入れ、安心して過ごせるあたたかみのある施設へもつながっていくのだと感じました。
参加した職員の感想(一部抜粋)
・自分が想像していた以上に不安を感じました。
・安心してもらうために「大丈夫ですよ」と声をかけてしまいますが、その言葉に何の説得力もないと気付きました。
・分かったつもりになっていただけで、まだまだ全然理解できていなかったことに気付かされました。
・これからは何をどのように感じて不安なのかを聞いて、それを一度受け止めてから声かけや話をしたいと思います。